虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「今日は、脅すだけにしといてあげる。でも――二度目はないから」

 折り畳みナイフの尖った部分を収納したリシーロはエクリーユの身体に覆い被さるのを止めると、すくりと立ち上がる。
 そして、可憐な桃色の瞳を細めてこちらを脅した。

「今度は、殺すわよ」

 暗闇の中で妖しい光を放つ眼光を呆然と見つめる自分の姿を目にしたからか。
 彼女は苛立ちを隠せない様子で、姉を拘束していた植物たちに止めるよう指示を出す。
 その後、開け放たれた扉から足早に出て行った。

(な、なんで……。どうして、リシーロが……?)

 まさか年下の妹に、鋭利な刃物を使って脅されるなど思いもしない。
 エクリーユは小刻みに全身を震わせながら、瞳を閉じる。

(あのまま、殺して貰えばよかった……)

 命を奪われなかったことに対する安堵や恐怖ではなく、後悔をいだいている時点で――少女の心はすでに、壊れてしまっているのかもしれない。

(抵抗なんてしなければ、楽になれた……?)

 生きていても、苦しい思いをするだけだ。
 ならばさっさと終わらせて、楽になりたい。
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