虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 そう思うのに、恐怖が勝ってしまってどうしても既のところで助けを求めるのを止められなかった。

(なんの力も持たず、ただ奪われるだけの自分が……私は大嫌い……)

 自己嫌悪に陥ったエクリーユが目元を小さな指先で拭った際、首が左右に揺れる。

 その時、いつもよりも頭が軽いことに気づいて愕然とした。

(髪、が……)

 ――次女はようやく冷静になり、状況を把握する。
 寝台には己の腰まで長い黒髪の残骸が散らばっていた。

(あの子はどうして、こんなに酷いことばかりするの……?)

 エクリーユはどれほど考えても答えが出ない思考を繰り返す。
 その後、彼女が去り際に告げた内容を思い出す。

(このままお兄様と、ずっと一緒にいたら……。私は、殺されてしまう……!)

 先程まではそれも悪くないかと考えていたのに、やはり恐怖のほうが勝ってしまうとそんなのは嫌だと言う思いのほうが強まる。

(もう、嫌……っ)

 どうして異能の発現は、5歳の時と定められているのだろうか。

 努力でなんとかなるのならば、死に物狂いで習得したのに。
 自分ではどうにも出来ないせいで、無能の烙印を呼ばれたエクリーユは一生他者に踏み躙られ続ける。
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