虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(変わりたい……)

 少女は頬を伝って零れ落ちた涙を拭い、赤い瞳に確かな決意を込める。

(皆が私を虐げるのは、自分が弱いからだわ。強くなれば、一目置いてくれる。家族の一員だって、認めてくださるはずですもの……!)

 己を奮い立たせたエクリーユは、もう涙を流さない。
 誰かに助けを求める弱い自分とは決別するのだと固く誓い、拳を握りしめる。

(――もう、お兄様には頼らない。私は誰の手も借りずに、強くなってみせるわ……!)

 恐れるものなど何もないと己を奮い立たせた少女は、人知れず努力を重ねた。

「エクリーユ……」

 ――ムガルバイトに話しかけられても、徹底的に無視をした。

(ごめんなさい、兄様……)

 とてもつらくて心は何度も悲鳴を上げていたが、歯を食いしばり必死に堪える。

 ――少しでも体力をつけるため、王城内を走り回った。

「姫が走り込みだと!? 変な噂を国民たちに囁かれたら、どうするつもりだ!」

「も、申し訳……」

「口答えをするな!」

「ひ……っ」

「一国の姫たるもの、つねに優雅に気品を持て! そんなんだから、貴様は皆から嫌われるんだ!」

 走り込みを目撃した兄に密告された結果、父親から怒鳴りつけられても――けして、エクリーユはそれを止めなかった。
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