虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「あなただって、嫌でしょう? 叩かれたり、傷つけられたりするのは……」

「なぁん」

「早く、逃げ……」

「なおーん!」

「きゃ……っ」

 猫はこちらに向かって、勢いよく飛び上がる。
 自分に攻撃を仕掛けてきたと勘違いしたエクリーユが悲鳴を上げれば、獣は本棚をガタガタと揺らしたあと一冊の本を床の上にボトリと落とすことに成功した。

「にゃーん」

 黒猫は「どうだ」と言わんばかりに威張ると、「褒めて」と言わんばかりにゴロゴロと喉を鳴らす。
 少女は恐る恐る落ちた本の表紙に視線を向け――そして、そのタイトルに驚愕する。

「これ……っ!」

 それは自分がどれほど探しても見つからない、目当ての本だったからだ。
 エクリーユは慌てて分厚い書物を手に取ると、パラパラと流し読みする。

『王家の血を引く子どもは5歳の誕生日までに異能を顕現させる。その兆しが目に見えて現れなかったとしても、知覚できないだけだ。望みを捨ててはならない』

 ある文章を目にしたエクリーユはその文字を愛おしそうに指先でなぞる。

(ああ……。やっぱり、そうなのね……)

 やはり希望を、捨てるべきではなかったのだ。
 少女は口元を綻ばせて喜びを露わにすると、本を大切そうに胸元へ抱きかかえる。
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