虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「心配してくれるの?」

「なぁん」

「あなたは、優しい子ね……」

「にゃあ~」

 真紅の瞳が、嬉しそうに綻ぶ。

(本当に、かわいい……)

 大切な物を作ったら、兄姉に奪われる。
 それだけならまだいいが、最悪の場合は取り上げられて破壊されてしまう。

 それがよくわかっていたからこそ、エクリーユはずっと、己に制限を賭してきた。

(リシーロは、望めばなんでも買い与えてもらえていたようだけれど……。私は、ぬいぐるみすらほしいとは言えなかった……)

 自分のものを持つことすら叶わぬ少女は、つらいことや悲しいことがあると膝をかかえて泣いていた。

(この子とずっと、一緒にいられたらいいのに……)

 黒猫を抱きかかえていると安心して、眠気がぶり返す。
 寝台に横たわった少女はうとうとと微睡みながら、考えたって答えの出ない思考を放棄し、好きなだけ睡眠を貪ろうとして――。

「失礼いたします」

 外側からドアを叩くノックの音とともに聞こえてきた女性の声に邪魔された。

「だ、誰ですか……?」

「なぁん」

 黒猫を抱きしめて全身を小刻みに震わせたエクリーユは、先程までの幸せでいっぱいな表情はどこへやら。怯えを隠せない様子で狼狽える。
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