虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(大丈夫……。ここには私を害する家族が、やってくることはないもの……)

 何度も自分に言い聞かせても、10年近く蓄積された恐怖心を克服するのは簡単なことではなかった。

 少女は瞳をきゅっと瞑り、いつ鈍い痛みが全身に走ってもいいように覚悟を決める。

 だが、己が恐れていた事態は起きなかった。

「姫様……っ」

 第2王女をそう呼ぶのは、1人しか思い浮かばない。
 エクリーユは怯えながらも、ゆっくりと真紅の瞳を開く。

 そして――開け放たれた扉からやってきたと思われる、エプロンドレス姿の妙齢女性を見捉えた。

(この方は……)

 その人物には、見覚えがある。

「にゃあん?」

 不思議そうな鳴き声を上げる猫を、気にしてなどいられなかった。
 獣を落とさないようにしっかりと胸元に抱きしめ、勢いよく上半身を起す。

 そしてベッドを降りると、覚束ない足取りでふらふらと勢いよく足を動かす。
 目指すのは、姿を見せた女性の元だ。

「テラマ……!」

 感極まって瞳から大粒の涙を流したエクリーユは、乳母の胸元に勢いよく飛び込む。
 こうして、再会を喜んだ。
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