虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「その割には、しっかりしている」

「テラマが時折、教えてくれたおかげよ。あとは……。母親の姿を、見様見真似で……」

 母と呼んで敬愛することすら、今となっては忌々しい。

 唇を噛み締めたエクリーユの表情には、一気に影が差す。
 そんな婚約者の姿を目にした彼は、眉間にシワを寄せながら少女に告げる。

「嫌なことを、思い出させたな」

「リドディエ、様……?」

「昔話など、するべきではなかった」

「ん……。髪の毛、くすぐったいわ……」

「触れられて、嬉しそうな顔をしているように見える」

「あ、あの……。それ、は……」

「違うか?」

 彼は何かへ導かれるように黒髪へ優しく触れたあと、不敵な笑みを浮かべて問い返す。
 エクリーユは言葉を詰まらせ、恥ずかしそうにぽつりと呟いた。

「陛下の行動は、心臓に悪いわ……」

「その言葉、そっくりそのまま返そう」

 少女は真紅も瞳を潤ませ、リドディエを見上げる。
 彼は嬉々として黒髪を一房手に取ると、毛先をパクンと口の中に入れてしまった。
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