虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「君は今まで、とても悲しい経験をした。そのつらい記憶を、僕の愛で癒やして欲しい」

「陛下……」

「そう願っているから、君の身体に触れた。エクリーユが、嫌ならもうしないが……」

 彼は切なげに紫の瞳を細めると、ゆっくりと身体を離した。

(心臓が、バクバクと高鳴って……。身体に力が、入らないわ……っ)

 支えを失った第2王女は、その場に力なく座り込んだ。

(こんな気持ちになったのは、初めてで……っ)

 どうすればいいのかなど、さっぱりわからない。
 エクリーユは助けを求めるように、潤んだ瞳をリドディエに向けた。

「エクリーユ。僕に、どうしてほしい?」

「わ、私は……」

「ああ……」

「嫌、だわ……」

「わかった」

 どうやら彼は、少女の願望を違う意味に受け取ったらしい。
 背を向けると、歩き出してしまう。

「待って……!」

 エクリーユはみっともなく床の上を這いづると、陛下の腰元に縋りつく。

「ち、違うの。陛下を、拒絶したわけじゃ……」

「そうなのか?」

「お願い……」

 彼が不思議そうに、問いかけている。
 それに答えなければと思うのに、喉が引き攣った。
 それは過去の光景を思い出し、泣きそうになったせいだ。
< 81 / 246 >

この作品をシェア

pagetop