虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
「彼らも、被害者なの! だから……っ」

「ああ。和平条約を解除したからといって、すぐさま攻め入るわけではない。何度か交渉を続ける予定だ」

「そう、なの……?」

「ああ。その際、ある条件を出す。エクリーユが心配しているような事態は起きない」
「なら、いいのだけれど……」

 エクリーユはほっと胸を撫で下ろすと、真紅の瞳から感情を消失させる。
 その後、まるで人形のように動かなくなった。

(お父様のように、野蛮で無謀な戦略を立てているわけではないのね……)

 ――在りし日の思い出を、追想するためだ。

 アティール王国の評判は、エクリーユが生まれた時からあまりよくはない。
 対話よりも力で屈服させることを選んだ父親は、恐怖で下々のものを黙らせてきたからだ。
 その性格は、長男のワンスや3男のフォセティに色濃く受け継がれている。

(今にして思えば……。イトゥク兄様とムガルバイト兄様以外には全員、その鱗片が見え隠れしていたわね……)

 自分よりもあとに生まれた妹でさえも、そうした狂気を惜しげもなく晒していたのだ。
 何もできない5男と心優しき4男以外の兄妹に王の座を明け渡そうものなら、今よりも劣悪な環境になるのは目に見えていた。
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