虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
(いい気味……)

 エクリーユは胸がスッとするような錯覚に陥りながら、6番目に生まれた5男に注目する。

「あ、あ……っ。や、止めて、くれ……! もう……!」

 イトゥクは他の兄妹に比べたら、わりかしまともと言える分類だった。
 おどおどとした性格で、いつも加害性の高い兄や妹に怯えている。

 自分が標的になりたくないから命じられたらエクリーユを加害し、己が虐げられる姿を痛ましそうに見つめることはあっても、助けを求める手を掴みはしない。

「ねぇ、イトゥク兄様。見て見ぬふりが重罪だって、あなたは知っていたかしら?」

「し、仕方ないじゃないか……! だって、そうしなきゃ……!」

「私に同情する気持ちが1ミリでもあったなら、ムガルバイト兄様のように手を差し伸べるべきだったのよ。そうすれば、こんな目に遭わなくて済んだのにね……?」

「え、エクリーユ……っ!」

「私の名前を呼ばないで」

 今まで散々無能呼ばわりしてきた人間に、都合のいい時だけ自分の名を口にされるのが不愉快で堪らない。
 少女は険しい表情でピシャリと言い放つと、5男を炎の牢獄へ放り投げた。
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