虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 だから「まったく問題ない」と胸を張るが、テラマにとって己の主張は到底受け入れがたいものであったらしい。

「し、しかし……!」

 彼女が難色を示すのならば、同意を得るのは諦めるべきだ。
 エクリーユは乳母から足元へ視線を移し、獣に向かってある提案をした。

「黒猫さん。一緒にお外で、かけっこをしましょうか」

「なぁん」

「姫様!」

 黒猫は「喜んで」と言うように鳴くと、のそのそと小さな足を動かして外に出る。
 エクリーユは宣言通り、かろうじて秘部を覆い隠している膝上10cmのワンピースを纏ったまま、その後ろ姿を追いかけた。

「こんな格好を許したと、陛下に知られたら……!」

 テラマはよほど不都合があるらしく、ガタガタと震えている。

(リドディエ様は、この程度の行いで怒り狂うほどに恐ろしい方なのかしら……?)

 自分に対してはいつだって優しい姿を見せてくれるからこそ、その反応が不思議で堪らなかった。

「黒猫さん。案内してくれて、どうもありがとう」

「なぁん」

 エクリーユは初めて、王城の外に出た。
 獣が少女を案内してくれたのは比較的安全と思われる庭園で、迷路のように入り組んでいるようだ。
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