虐げられた末に復讐を終えた王女は、世界で一番幸せな王妃となる
 エクリーユは、気がついた時には、寝室のベッドに横たわっていた。

「黒猫、さん……?」
「起きたか」

 目元を舌で舐められている感覚にくすぐったさを覚えた少女が獣の名を呼びながら瞳を見開くと、不安そうに揺れる紫色の瞳と目が合った。
 どうやら小動物ではなく、彼が自分に口づけて涙を拭ってくれていたらしい。

「リドディエ、様……」

「怖がらせたな……」

「あ、あ……っ」

 陛下が己の髪を撫でつけるたびに、眠る前に起きた出来事が蘇る。

(もう二度と、顔を見たくないと思った。なのに……。イトゥク兄様と、リドディエ様が……)

 エクリーユは痛みから身を守るように、寝台の上で丸まってきつく目を閉じた。

「嫌……っ!」

「大丈夫だ。僕は君に、危害は加えない」

「でも……っ。あいつと……っ。私の、話……!」

「あちら側はエクリーユを取り戻したがっているようだが……」

「え……?」

「やっと、君にこうして触れられるようになったんだ。手放すわけがないだろう?」

 リドディエの口から想像もしていなかった言葉が紡がれ、エクリーユは小首を傾げて驚いた。
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