元王太子の俺、島国で王やってます!(※ブロマンス要素あり)
「それで、昨日の話だけど。リスガの件が終わったら、やっぱり俺と一緒に行こう」
「しつこい。俺は一人で自活すると言ったはずだ」
きっぱりと拒否される。俺はしょんぼりとした。
「……寂しくないか? それだと」
「お前には関係ないだろう」
「関係なくなんかない。俺たち、友達だろ?」
つい本心で言うと、イブキは虚を突かれた顔をしていた。
え? そんなに驚いたのか?
「……友達? 俺とお前が?」
「そうだよ。だって、せっかく縁あって知り合ったんだから。同い年みたいだし」
俺もイブキも十六歳。奇遇なことに。
俺にはお忍びで何人も仲間はいた。でもそれはただ楽しい時間を過ごすことが中心の、薄っぺらいものだった。だから、王都を去る時もわざわざ挨拶はやめておいた。
でも、イブキとはそれだけじゃない。つらい気持ちも、話すことができた。こういう相手を友達と言うんじゃないかと俺は思う。
「……」
「もう少し考えてみてくれないか? それでも嫌なら、俺も諦めるから」
我ながらしつこい自覚はある。でも、イブキをこのまま一人にしておきたくないし、俺だって……やっぱり友達と一緒にいたい。一人は嫌だ。
「……分かった」
イブキはおずおずと頷いた。
イブキが答えを出すまでというのもあるが、リスガを待ってしばらくここにいようということになって。
俺は水筒の水を一口飲む。おいしい。乾いた喉に染み入るようだ。
つい、ぐびぐびと水を飲んでいると、足音が聞こえてきて、俺はすっと目を細める。明らかに一人じゃない。十数人分はある。
俺もイブキも顔を上げて、お互いの顔を見つめあった。目配せし、お互いに得物を手に掴む。
嫌な汗が背中を流れた。もしかして、やっぱり村人たちか?
「おい。あんたら」
「昨日の……!」
厳めしい顔つきで顔を出したのは、年老いた老人だった。俺に親切なのか不親切なのか、忠告してきたらしい人。
老人の背後には、ぞろぞろと男性の村人たちがたくさんいる。木の棒や、果てには調理道具のお玉を持っていたものだから、俺はぎょっとしてしまった。
こいつら、いざとなったら俺たちをボコる気か? 嘘だろ!?
「……なんですか。俺たちは何もしていないでしょう」
俺は努めて冷静に返答する。が、年老いた老人は嫌そうに顔をしかめた。
「勝手に空き家に住み着いておいて、ふてぶてしい」
俺は「あ」と思った。それはそうだった。といったって、非常事態だったのだし、大目に見てくれてもいいのでは。
甘ちゃんな考えかもしれないが、むっとする俺に、村人たちは少し詰め寄った。
「今すぐ出て行け」
「鬼族がいるなんて恐ろしい」
「鬼族を匿ったとあったら、俺たちが周りからきっと何か言われる」
口をついて出てくるのは、イブキを差別視することばかり。
俺はイラッとした。すべて、偏見じゃないか。イブキは、話していたらこんなにも『普通』なのに。
俺は立ち上がって、村人たちを一喝する。
「あんたらに、イブキの何が分かるっ。イブキは真面目で優しいごく普通の男だ。俺たち人族と変わりない」
「変わりないわけないだろ!」
そうだ、そうだ、と背後の村人たちが騒ぐ。
木の棒やお玉を持ったその手は僅かに震えている。確かに怖いのだろう、鬼族が。だけど獣人族はよくて、鬼族がダメという理屈がよく分からない。
鬼族は確かに身体能力に秀でた種族だということだけど……見た目が恐ろしいからか? それで歴史上ずっと差別されてきたんだろうか。
「いいから、とっとと出て行け! そいつを庇うのなら、あんたも同罪だ!」
「冷静になってほしい。だから、俺たちが何をしたっていうんだよ」
「うるさい! 話の通じない奴だ、出て行け!」
「っ!」
向こう側からひゅんと飛んできた石が、俺の頬を切った。うっすら血の線が滲む。
「ラーシヴァルト!」
黙り込んだままだったイブキが真っ青な顔で、俺の名前を呼んだ。
俺は振り向いて、にこりと気丈に笑いかける。大丈夫だという意味合いを込めて。
再び村人たちに顔を向けると、石を投げた村人は少しびくついていた。実際に人を傷つけた重みを理解したのか、俺の報復を恐れているのか。
俺はあくまで毅然として対話を続ける。
「……あんたらの言い分は分かった。よし。じゃあ、取引をしよう」
「取引?」
食いついたのは、年老いた老人だ。僅かに目を輝かせた。