元王太子の俺、島国で王やってます!(※ブロマンス要素あり)
「……孤児院の件、さ。やっぱり、行かない。僕、あの村からあんまり離れたくないから」
俺は首を傾げた。孤児院に行きたくないというのは少し意外だったけど、それよりも『あの村』というのが気になる。
「あの村? この村じゃなくて?」
「こんな村、ただ住み着きやすかっただけだよ。僕の故郷じゃない」
「じゃあどこにあるんだ? リスガの故郷って」
「ここから西の孤島」
レノスが眉をぴくりと動かした。もしや、と唇を動かす。
だけど、それは俺たちの耳には聞こえなかった。
「西の孤島? そんな島、近くにあるのか?」
少なくとも、アルヴェルス王国領にはない。
リスガはむっとして頬を膨らませた。
「あるもん!」
「あ……ごめん。否定してるわけじゃなくて。ただ、確認しただけだよ」
「どこの国にも属していない無法地域なのでは?」
口を挟んだのはイブキだ。世界地図を脳内に思い浮かべているのか、顎を軽くさすっている。
「この近辺に、島を領土としている国はないはずだ」
「確かに俺もそう記憶してるけど……っていうか、イブキ。詳しいんだな」
素直に感心して褒めたものの、イブキは肩を竦めるだけだった。
「里の長老から聞いた豆知識だ」
「……俺は聞いたことがあります。騎士団内部の噂で」
レノスがようやく口を開いた。慎重に言葉を選ぶように、静かに語る。
「最果ての島。そこには世界中の花々が咲き誇る人々の楽園があるという、おとぎ話のような噂を」
リスガがぷっと吹き出して笑った。
「はは、大袈裟だよ。確かにお花畑はあったけど、普通の島だよ」
「今はどれくらいの島民が住まわれているんですか?」
「僕一人」
「「「!?」」」
俺たちは目を見張る。
リスガは頑張って笑顔を浮かべていた。本当はまだ泣きたそうなのに。
「みんな、謎の疫病で死んじゃった。子どもの僕だけが助かった」
俺は胸を痛めた。……そういうことだったのか。孤児院にさえ引き取られなかったのは。
「……大変だったな。じゃあ、それからここまで一人できたのか」
「うん」
不法入国といったらそうだけど、誰が責められるだろうか。この子を。
俺はリスガに目線を合わせ、もう一度確認を取る。
「本当に孤児院には行きたくないのか?」
「故郷を離れてまでは行きたくない。もう、何度聞くんだよ」
「ごめん。最終確認だよ」
俺は屈めていた腰を上げる。
最果ての島。まだどの国も占領していない土地。
「レノス。書簡をこれから近隣諸国に届けてくれないか」
「承知いたしました」
すべてを察したように、レノスが即答する。
イブキもリスガも不思議そうな顔だ。俺は二人に悪戯っぽく勝ち気に笑いかけた。
「俺たちの国を作る。そうすれば、リスガも故郷を離れずに済むだろ?」
「本当に!?」
リスガが歓喜の声を上げる。だけど……すぐにその目は、胡散臭いものを見る目に変わった。無理もない。
「国なんて作れるの? 僕たちだけで」
「形式上の国なら、案外簡単に作れるんだよ。そう宣言すればいいんだ」
問題は……周りの国がその宣言を認めれてくれるかどうかだ。
だからこそ、俺の元『王太子』の肩書きは大分有利に働いてくれるはず。少なくとも、アルヴェルス王国以外は、独立に賛同してくれる可能性が高い。
俺が受けた理不尽な仕打ちを話したら、理解してくれるひともいるだろう。そして正直なところ、小さな島一つなんて、躍起になって奪う領土でもないはず。
すぐ、書状をしたためて、まずカレシアに送ろう。一気に送りつけても、協調性のない国に見えてしまいかねない。
まずは、地盤固めからだ。