元王太子の俺、島国で王やってます!(※ブロマンス要素あり)
第五話
……と、思ったものの。冷静になった俺は、一旦取りやめた。
「まずは島に行ってからだな。よくよく考えたら」
土地を確認もしていないのに自国宣言をしたら、もし土地がなかった場合、どう考えても間抜けな国王さまでしかない。
俺の独り言に苦笑いするのは、レノスだ。
「確かにおっしゃる通りです。俺も早合点しました」
ポンコツ主従だと、誰かに笑われそうな流れだったな。はは。
「あそこだよ!」
リスガが小舟から、元気いっぱいに島を指差す。
海の上にぽつんとある小島。といっても、確かに小国として独立できそうなほどの領地面積はある。
俺は小舟の席に座ったまま、すぐに相槌を打った。
「そうか。あそこがリスガの故郷なんだな」
「うん!」
アルヴェルス王国を発ち、早一ヶ月。
あの村を出て、荒れ地の国カレシアを横切って、最果ての島へ向かっている。最果ての島はもう目と鼻の先だ。
輪郭が見え始めた孤島を前に、俺はふと思い出した。
「リスガ。ご両親のお墓は? 埋葬できたか?」
「え? うん、土に埋めたけど」
「……そうか。分かった。あとで火葬し直そう」
土葬では、衛生面のリスクがある。火葬が当たり前の国で育ったこともあって、俺は火葬を提案した。
リスガは不安そうな表情だ。
「燃やしちゃうの? みんなの死体」
「必要なことなんだ。何十年も土地を使えなくなってしまうし……」
「やだっ!」
リスガは半泣きで、首を左右に振る。駄々っ子と化してしまったリスガに困り果てていると、後ろからイブキが口を挟んだ。
「土葬だって、結局は肉体が腐敗して骨だけになる。同じことだ」
冷静に、けれど残酷な事実を告げる。
俺は思わず顔をしかめそうになった。だけど、俺では言えない言葉だ。だから、正直なところ大変ありがたい。
リスガはぽかんとした顔だ。
「え……ほ、骨になっちゃったの? みんな」
「半年前であれば、まだだろう。だから早く火葬しないと、ガスのような異臭が漂う土地になってしまう。それでもいいのか?」
「う……」
「数十年もかけ、親御さんたちの死体は少しずつ腐っていく。俺だったら、炎に焼かれて一瞬で骨になった方がいいが」
リスガは俯いた。少し間を置いて頷く。
「……分かった。確かにそうだね。そうするよ」
同意してくれたものの、リスガはしょんぼりとしている。猫耳と尻尾もしゅんと沈んでいた。
やっぱりまだ遺体を燃やしたくない気持ちがあるんだろう。だけどきっと、故郷のみんなの気持ちを優先したんだ。
「いい子だな。リスガは」
「えっ!」
びっくりとして飛び上がったリスガに、俺はにこりと微笑みかける。
「みんなの心を大切にしたんだろ? 優しいいい子だなと思って」
無理強いをしたようで、胸が痛む部分はあるけども……。
「そ、そう? へへっ」
何も知らないリスガは、照れ臭そうに笑った。
イブキはふっと笑う。そしてメインで船を漕いでいるレノスのサポートに戻った。
二人とも、重労働ありがとう。俺もせめてサポート役をやると申し出たんだけどな。イブキに「ラーシヴァルト様には、危なっかしくて任せられんよ」と悪戯っぽく笑われて、固辞された。
俺だって腕力は人並みにあるのに。だけど、鬼族であるイブキの方が腕力も身体能力も上だ。渋々、サポート役の座を譲った。
「そろそろ、上陸できますよ」
「ああ」
レノスの言葉に俺は頷き、目の前の島を見据える。
――この土地を使って、理想郷を作るぞ。