元王太子の俺、島国で王やってます!(※ブロマンス要素あり)
第六話
どう見ても自害するつもりのイブキを、俺はどうにか止めたくて、必死に飛びついた。結果、勢い余って押し倒してしまった。
「いてて……」
額を柔らかい地面にぶつけてしまい、鈍痛が襲う。だけども、イブキの心配をするのが先だ。
「イブキ! 大丈夫か!?」
「ラーシ、ヴァルト……?」
「心配させるんじゃねえよ、もう!」
「!?」
怒号しながら、でも目の前にいるイブキの体を抱きしめる。強く、強く。
イブキの温もりを確かめたかったから。
自然と目から涙が流れ落ちていた。
「バカ野郎…っ……! 本当にバカだろ! どうして死のうとなんてするんだよ……!」
「……俺は」
「イブキが罪人であろうと、俺は許すよ! だって、イブキは理由もなくひとを殺めるはずがない! だいたい、だから『訳あって』里を追い出されたんだろ!?」
「……だが。俺は」
「ああもう、うるさい! とっとと頭を冷やして起き上がれよ!」
「? ? ?」
もう意味が分からない謎理論を口にしていることくらい、俺も自覚がある。
でもこうでもしないと、イブキの覚悟を変えられない。だから。
俺はぐっとイブキから体を離し、その額に頭突きをかました!
「ぐっ!」
イブキはさすがに驚き、また痛みに顔を歪める。
俺も……ちょっと額が痛い。二重の意味でも、痛かった。
ようやく冷静になってくれたように見えるイブキを、俺は正面から見つめる。
「イブキ。生きよう。一緒に」
「……俺にはお前と一緒に生きる資格など」
「そんなの俺が決める。一緒に生きていいって、俺が決めたんだ。――俺がイブキの居場所になる!」
イブキの誤った覚悟なんて許さない。自死するなんて、そんな悲しい別れがあるか!
「どうしてもつらいっていうんなら、俺がずっと傍で支え続けるから! だから、頼む! 死なないでくれ!」
俺がまた泣きながら訴えると、イブキはしばらく言葉を失っていた。でも、その眦からつっと涙が流れ落ちる。
「…っ……」
静かに嗚咽を漏らし始めるイブキ。きっと……ずっと、一人でつらかったんだな。
その華奢な肩を、俺はそっと抱き寄せた。
「泣き虫だな。イブキは」
「っ、うるさい…っ……この無神経王子」
「もう王子じゃないけど」
「だったら、俺も……泣き虫なんて卒業してやる」
イブキは強引に俺の手を振り払う。顔を背け、とめどなく溢れ出る涙を必死に止めようとした。それでも、なかなか涙は止まらなかった。
「ラーシヴァルト殿下! イブキ!」
「大丈夫!?」
リスガが、続けてレノスが、切羽詰まった表情で駆けつける。
俺たちは二人を振り向いた。大丈夫だという意味合いを込めて俺は笑い返したけど、イブキは泣き顔を隠してすぐそっぽ向いた。
「イブキ。一緒に生きよう。それで一緒に国を作るんだ」
俺たちが作る国。きっと、とても穏やかで平和な国になる。
もう一度声をかけると、イブキは迷うそぶりを見せたけど……躊躇いがちにこくりと頷いた。
「……ありがとう。ラーシヴァルト」