元王太子の俺、島国で王やってます!(※ブロマンス要素あり)
その後、イブキの過去をもっと詳細に聞きながら森を抜けた。
想像以上に重い話だった。鬼族の隠れ里に人間が侵入し、妹さんを……襲おうとしただなんて。不運だったという一言では到底済ませられない。
俺はただ、「つらかったな、ずっと一人で生きてきて」とだけしか、イブキに声をかけてあげられなかった。
「こんな俺でも……本当にいいのか?」
イブキはこわごわと確認する。
俺はもちろん、頷いた。
「当たり前だろ。そんなの……言わば、正当防衛じゃないか」
確かにイブキはが犯した罪は重いけど。でもそれは妹さんのためであり、どう考えてもイブキが悪かったとは言えないよ。少なくとも、俺の場合は。
イブキは、どことなく安堵の表情を浮かべていた。でも、なぜかな。同時にちょっと苦しそうでもあった。
「……イブキ?」
「いや……すまん。なんでもない」
イブキは誤魔化すように曖昧に笑う。どうしたんだろう。
元王立騎士であるレノスだけは、理解できると言いたげな顔をしている。
「……人の命というのは、重いものなのです。ラーシヴァルト陛下」
俺ははっとする。そうか。
自分の罪を断罪されないこともまた、つらいものなんだ、きっと。罪人の末路というのは、想像以上に茨の道なのかもしれなかった。
「……レノスもつらいのか? その、戦争に出ていた頃のこと」
率直過ぎたのか、レノスは苦笑いする。不思議と苦笑する顔が似合う男だ。
「ご想像にお任せします」
「う……ご、ごめん」
俺は珍しくもしゅんとした。無知とは恐ろしいな、俺。
イブキやレノスみたいな、やむなく人を殺めてしまった人の居場所も……俺が理想とする国に作りたい。だって、生き残るためにはきっと仕方がなかった。
もちろん、相手にだって……生き残る権利はあったのだろうし、決して正当化してはいけないことなんだろうけど。でも、俺は……二人を責められないよ。
「俺は二人とも、拒まないよ。絶対に」
念押しすると、イブキもレノスもほっとしたように見えた。無力だった自分が、すごく歯痒い。
もっと強くなりたい。様々な意味での『強さ』がほしい。
そうしたらきっと、俺の理想とする国が近付く。
「もうすっかり夕暮れだな」
俺は小さく呟く。
リスガの故郷には、日が暮れる前に辿り着いた。森に囲まれた小さな集落だったようで、茅葺き屋根を持っている一軒家がいくつも点在している。数十人は住んでいた村じゃないかな。
「リスガ。リスガの家は?」
「こっち」
誰もいない故郷に帰ってきたからか。なんとも形容しがたい表情で手招きするリスガの後をついていくと、周りのものよりも一際大きい家があった。二階建てだから、家族用のものだろう。
家の中は、まだ生活できそうな外観だった。そういえば、まだ半年と少ししか経っていないんだったな。
「ここに住もうか。俺たちは」
リスガは不思議そうな顔で俺を見上げる。
「俺『たち』? 誰と誰が?」
「俺とリスガ」
「え、本当に!?」
リスガは嬉しそうに猫耳をぴくぴく動かした。無邪気にはしゃぎながら、「じゃ入って!」と俺の手を引き、家の中に上げてくれる。
そこへ。
「あの、ラーシヴァルト殿下」
「どうした。レノス」
レノスがにこりと笑いながら、ちゃっかり後をついてきた。
「ラーシヴァルト殿下のお傍を離れるわけにはいきません。俺も交ぜて下さい」
「いいよ!」
なぜか……ではない、か。リスガがレノスに許可を出す。
レノスまで去っていき、イブキ一人が心細そうに立っていることに俺は気付いた。
「……じゃあ、俺は隣で」
イブキははっとした顔で、その場から離れていこうとする。
俺はすかさず、イブキの手首を掴んだ。まったく。まだ遠慮しているのか。
「じゃ、イブキも俺たちとここで」
「!」
「もちろん、いいよー」
「俺も構いません」
「……」
押し黙っているイブキを強制的に連れて行く。
イブキはほんのり嬉しそうだった。別になんとも思っていません、と言わんばかりの表情だったけども。素直じゃないな。まったく。
その後、リスガの家で夕食を食べ、湯浴みもした。薪でお湯を作る筒式のお風呂があったから。なかなか新鮮だった。
この村……もとい、『この国』の食料源は多そうだ。森で木の実やキノコは採れるし、川や海辺で魚や貝類も手に入れられる。
気になるのは……主食と野菜くらいか。