元王太子の俺、島国で王やってます!(※ブロマンス要素あり)

「よし。畑でも作ろうか。明日から」
 すっかり夜の闇の中、俺が藁布団の中で宣言すると、どこからか「明日から!?」という嫌そうな声が聞こえた。リスガだ。
「明日くらい休もうよぉ……」
「休んでる暇はまだない。頑張ろう。な?」
「ラーシヴァルトって人使い荒くない?」
「それは昔からです」
 レノスがにこやかに毒を吐くと、これまたどこからか吹き出す音が飛び出た。この声は……イブキだな。
「さすが、元王子さま」
「やかましいぞ。元頭領息子」
 軽口を叩き合うと、場が一瞬で楽しいものに変わる。空気が和らぐというのか?
 イブキとは不思議と気が合う。こんなにも楽しくやりとりができる相手は、同年代では初めてだ。
「仲いいねー、二人とも。……へへっ」
「ん? どうした、リスガ」
 リスガが嬉しそうにしている気がして、俺は暗闇から声をかける。
 リスガは笑顔を弾けさせた。
「みんなで寝るのっていいなって」
「「「!」」」
 俺たち三人とも、息を呑んだ。リスガの言わんとすることを察したからだ。
 リスガ……そうだよな。この村が滅んでから、リスガはずっと一人きりだった。きっと俺が想像もつかないほど、孤独な日々だったんだろう。
 沈黙が下りると、リスガははっとした様子で「あっ、ごめん!」と謝罪した。子どもらしからぬ気遣いだ。
 俺はどう言葉を返そうか迷った。あまりにも健気すぎて、目が涙で潤む。
 逡巡していると、
「――リスガ。遠慮など不要だ」
 イブキが真っ先にそう言った。
 俺は虚を突かれた。イブキ……。意外だ。まさか、イブキがそこまで優しい言葉をかけるなんて。
 ちょっと変わったな。いや、それともこれが素なのか?
 判別がつかないものの、俺もすぐ微笑み、頷いた。
「そうだな。俺たちには気なんて遣わなくていい」
「ええ。そうですね」
 レノスも同意し、俺たち三人からの言葉に、リスガは「っ!」と息を詰めた。なんだか、僅かに泣いているような気配を感じる。
「っ、うん! ありがとう、みんな!」
 リスガは努めて明るい声を出す。
 俺たちはほっとし、同時にやるせなさを覚えた。幼い子どもが村の滅びに直面するなんて、とても残酷な現実だったはずだ。
 俺たちに、リスガにとって滅んだ故郷を復活させることはできない。でも、リスガの『新しい故郷』を作ってあげることはできる。
 リスガ。お前は決して一人じゃないからな。
「……ふぁああっ」
 リスガがあくびをする声が聞こえる。
 俺たちは苦笑した。切り替えが早いな。さすが、野生児。
「じゃあ僕、寝るね。おやすみなさーいっ」
 今度は、もぞもぞと藁布団の中に頭を突っ込む音が聞こえる。圧死してしまわないか心配になって、俺は声をかけた。
「リスガ?」
「っ、な、なに?」
 俺ははっとする。慌てて口をつぐんだ。
「……いや。なんでもない。おやすみ」
「うん」
 すすり泣くリスガの声が僅かに漏れ出ている。そうか。さっきのあくびは……まだ泣いていることを誤魔化すための演技だったんだな。
 ――強がりが多いな、このメンツ。俺も含めて。
 気付かぬふりをしてそっとしてやる優しさを、俺は発揮した。それは多分、イブキやレノスも一緒だろう。
 リスガの小さな泣き声が、藁布団の中に吸収されていく。その静けさに、俺もなんだかつられて泣きたくなった。
 涙脆くなったな……俺。

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