元王太子の俺、島国で王やってます!(※ブロマンス要素あり)
第七話
「ラーシヴァルトっ!」
「ぐえっ!」
翌朝。
リスガに腹部を軽く踏まれて、俺は苦い目覚めになった。すぐに藁布団から起き上がり、リスガに対して軽く眦をつり上げる。
「リスガ! 朝早くからなんだ」
「もう昼前だよ。いつまで寝てるのさ」
「げっ、マジで!?」
俺は慌てて飛び起きた。腕につけたままでいた腕時計を確認すると……あっ! 本当だ、もう十一時半だ!
寝坊してしまった。どれだけ過眠したんだよ、俺。
「ごめん、ごめん。……でも、元気になったみたいだな」
ぼそりと呟くと、リスガはきょとんとする。
「え?」
「いや、なんでもないよ。それよりも、みんなは?」
「畑を耕してるよ。まぁ、畑自体は元からあったんだけど」
「ええ!?」
俺が寝ている間に。イブキとレノスの二人とも、汗水垂らして働いてくれていたのか。急いで俺も手伝わないと!
空腹を堪え、外に出る。リスガの案内で、二人がいる畑へと向かった。
「ごめん、二人とも!」
「ラーシヴァルト殿下。本日は遅いご起床ですね」
「だから、悪かったって」
レノスにちくりと刺され、顔をしかめる俺。イブキはくすっと笑ってから、「おはよう、ラーシヴァルト」と笑顔を浮かべた。
こんなにも爽やかなイブキの笑顔をこれまで見たことがなかった。
いつも口数少なくて、表情にも陰があって……でも、昨日の一件で、吹っ切れたものがあるのかな。よかった。
「おはよう、イブキ」
俺も笑みを返す。にこりと微笑みを交わしてから、二人が耕している畑をよく見る。
ああ、本当だ。元からあったということもあって、すでに畑の形にはなっている。二人がやっているのは、土を掻き混ぜる作業だ。
「トマトを植えましょうかね」
レノスが、懐からサッと『トマトの種』と書かれた小袋を取り出す。
俺は吹き出してしまった。
「持ってるのかよ」
「自宅に置きっぱなしにしていたので」
「家庭菜園が趣味だったもんな」
「ええ」
そう、レノスはプランター栽培をこよなく愛する男だった。すっかり忘れていた。
ということは、農作物作りはレノスに任せたら安心だな。
「……二人は本当に仲がいいんだな」
俺とレノスが笑い合っていると、イブキは少し寂しそうに呟いた。
俺は驚いて、イブキの方を見つめる。
「俺とイブキだって仲がいいだろ?」
「!」
イブキは目を丸くする。でも、どことなく嬉しそうに「そうだな」と同意した。ヤキモチでも焼いていたのか? 男友達同士だけど。
それにしても、俺も鍬で畑を耕してみたかったんだけどなー。もう終わってる。次の機会に頑張ろう。
「ねえねえ! 終わったらさ、山の湧き水を汲みに行こうよ」
「湧き水? ここ、水が湧いてるのか?」
リスガを振り返ると、リスガは身振り手振りを使って解説した。
「うん。シュワシュワってする、不思議な水だよ」
「シュワシュワ……? え、もしかして炭酸水か!?」
「それそれ」
「すごいな! 自然の炭酸水なんて!」
のちのち、諸外国に天然産の炭酸水として輸出できそうだ。ありがたい。
レノスも「すごいですね」と感心したように呟いた。イブキだけは……見たことも聞いたこともないのかもしれない。不思議そうに首を捻っていた。
「タンサンスイ……?」
「不思議な喉ごしだけど、体がすっきりとする水だよ。飲んだことないか?」
「分からん」
「じゃあ、ちょっと飲みに行こうよ!」
リスガの提案で、俺たちは一旦その場を離れた。リスガの後をついていき、小山の中腹までのんびりと登る。
「ほら、これだよ」
「へえ! すごく、綺麗だな……」
ぽこぽこと岩場の中で炭酸水が湧いている。ちょっと手を突っ込んでみると、やはりぴりっとした刺激が肌に走った。
「おお。本当に炭酸水だ」
「でしょ? 飲んでみよう」
岩場に置かれている複数の木製コップから、リスガがコップを一つ手に取る。無限に湧き出ている炭酸水をコップで掬い、一気に飲み干した。
「ぷはっ! うまい!」
「はは。おじさんじゃあるまいし」
「はぁ!? どういう意味!?」
「あ」
またも、無神経王子ぶりを発揮してしまった。