クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
見上げた先輩の瞳は、これまでに見たことがないほど濃い色をしていて。
居酒屋のオレンジ色の照明が、その奥にある、言葉にならない揺れを映し出していた。
(……先輩。……今、私のこと、見てくれてますか?)
胸の鼓動が、店内のBGMをかき消すほど大きく跳ねる。
けれど、先輩は不自然なほど素早く時計に目を落とすと、まるで自分に言い聞かせるような、少し掠れた声で言った。
「…………よし。……今日は、これくらいでお開きにするか。……少し、外の空気に当たろう。一駅歩くか?」
その声は、さっきまでより少しだけ早口で。
まるで、自分に「落ち着け」って言い聞かせてるみたいに聞こえた。
(……駄目、ここで逃がしちゃダメ)
私は、先輩が置いたコースターの端をそっとなぞった。
寂しさよりも、確かな手応えが指先に伝わってくる。
「……えー。もう、そんな時間ですか? ……あ、でも確かにちょっと飲みすぎちゃったかな。……いいですよ、一駅歩きましょう」
私はわざとらしく、ふわっと席を立った。
少しだけ赤くなった先輩の耳。
いつもより少しだけ、足元が危なっかしい大きな背中。
夜風に当たれば、少しは冷めると思っているのかもしれない。
でも、私はもう先輩の隣を離れるつもりなんてなかった。
居酒屋のオレンジ色の照明が、その奥にある、言葉にならない揺れを映し出していた。
(……先輩。……今、私のこと、見てくれてますか?)
胸の鼓動が、店内のBGMをかき消すほど大きく跳ねる。
けれど、先輩は不自然なほど素早く時計に目を落とすと、まるで自分に言い聞かせるような、少し掠れた声で言った。
「…………よし。……今日は、これくらいでお開きにするか。……少し、外の空気に当たろう。一駅歩くか?」
その声は、さっきまでより少しだけ早口で。
まるで、自分に「落ち着け」って言い聞かせてるみたいに聞こえた。
(……駄目、ここで逃がしちゃダメ)
私は、先輩が置いたコースターの端をそっとなぞった。
寂しさよりも、確かな手応えが指先に伝わってくる。
「……えー。もう、そんな時間ですか? ……あ、でも確かにちょっと飲みすぎちゃったかな。……いいですよ、一駅歩きましょう」
私はわざとらしく、ふわっと席を立った。
少しだけ赤くなった先輩の耳。
いつもより少しだけ、足元が危なっかしい大きな背中。
夜風に当たれば、少しは冷めると思っているのかもしれない。
でも、私はもう先輩の隣を離れるつもりなんてなかった。