クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

#24【凛視点】 「後輩ですか、それとも一人の女の子ですか」——視線を逸らさず問いかけた夜

重い扉を押し開けると、そこには居酒屋とは全く違う時間が流れていた。
カウンターの琥珀色の灯りが、隣に座る先輩の横顔をやわらかく照らしている。

「……ここ、静かでいいですね」
「ああ。……少し、静かすぎるくらいだな」

先輩は、差し出されたジントニックのグラスを指先で弄びながら視線を落とした。
居酒屋での饒舌さが嘘のように、二人の間に、密度の高い沈黙が降りてくる。

(……あ、先輩。また『上司』の顔に戻ろうとしてる)

私は、冷えたグラスに浮かぶライムをストローでそっと突いた。
甘酸っぱいカクテルを一口含むと、アルコールの熱が喉の奥からじわじわと全身に広がっていく。

「ねえ、先輩。……さっきの続き、聞いてもいいですか?」
「……続き? 何のことだ」
「とぼけないでくださいよ。……『歌詞』の話です」

カウンターに肘をつき、隣に座る先輩の瞳をじっと見つめる。
今夜はもう、この人の心の「一番深いところ」を覗き見るまで、引き下がるつもりはなかった。
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