クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
静かな部屋に、低い振動音と軽快なメロディが鳴り響いた。

私はビクッと肩を揺らし、慌てて先輩の腕の中から身を離して上体を起こす。ベッドの下に落ちていたスマホを見つけてアラームを止めた。

しんと静まり返った部屋。
先輩の温もりから離れた途端、現実が一気に戻ってくる。

(……あ、もうこんな時間だったんだ……
今日も、いつも通りの一日が始まる……
先輩と一緒にいる時間が、こんなに特別なのに、外の世界に戻ったらどうなるんだろう)

……もしこのことが誰かに知られたら、変な噂になったり、先輩に『部下に手を出した』なんて迷惑かけたりするかも……。怖いな……

胸が急にドキドキしてきた。
違うドキドキ。今までの甘いドキドキじゃなくて、不安なドキドキ。

俯いてしまった私を見て、先輩が優しく声をかけた。

「……りんりん、どうした?」

私はひと呼吸置いて、布団の中で膝を抱えながら小さな声で言った。

「……先輩。わがまま一つ、いいですか……?」

先輩が少し首をかしげる。
私は目を逸らしながら、でもちゃんと伝えたくて言葉を紡いだ。
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