クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
数日後、新入社員の合同研修。

教壇に立ち、新人たちを見渡した瞬間——真っ先に彼女を見つけてしまった自分に、内心でひどく呆れてしまう。
視線を特定の人物に固定するわけにはいかない。無心になれと己を律し、俺は隙のないロジックで営業の基礎を説いた。
無駄話を一切挟まない俺のレクチャーに、並み居る新人が萎縮し目を逸らす。
だが、企画部に配属されたばかりの彼女だけは違った。

「あの……すみません、先輩。今の部分、私には少し難しくて……。でも、ちゃんと理解して仕事に活かしたいんです。もう一度だけ、教えていただけませんか?」

わずかに震える手でペンを握り、必死に食らいついてくる。
純粋な仕事への熱量を感じさせるその真っ直ぐな瞳を見て、俺は思った。
この子は仕事に対して、驚くほど前向きで誠実なんだな、と。

……そのひたむきさを削がぬよう、俺はあくまで指導役の一人として適切な距離感を保とうと心に決めた。
余計な感情を挟めば、きっと彼女のためにもならない。だから、必要以上に関わらない——そう自分に言い聞かせた。
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