クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
それからひと月余り。
彼女とは、たまに廊下ですれ違い、挨拶を交わす程度の関係が続いた。
企画部で一生懸命に走る彼女の背中を、俺は部署違いの一人の職場の上司として穏やかに見守っていた。
これでいい。これが正しいのだと思っていた。

だが、運命はそれを許さない。
六月の半ば、部長に呼び出された。

「営業と企画の合同で長期プロジェクトチームを立ち上げる。プロジェクトのリーダーはお前に任せたい。それと…企画部の御空(みそら)君をサブに付けた。今回のプロジェクトでは彼女のような若い感性が必要だ。彼女にとって初めての大きな仕事になるだろう。しっかり面倒を見てやってくれ」

断る理由は、どこにもなかった。

「……承知しました」

俺は無表情で頷いたが、胸の奥ではかつてないほどの激しい動悸が始まっていた。

……よりにもよって、彼女とコンビか。
これから数ヶ月の間、彼女との距離が強制的に縮められる…。

(……徹底しろ。意識するな。無心になれ。俺はただの上司だ)

俺は自分自身に、呪文のように言い聞かせた。
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