クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
執務室の出口で待つ彼女に歩み寄る。
時計の針は予定時刻ぴったり。

「行こうか」

努めて低く、感情を削ぎ落とした声。
慌てて隣に並んだ彼女が、落ち着かない様子で喋り始めた。

「今日、よろしくお願いします!資料、何度も確認したので大丈夫だと思うんですけど、もし何かあったらフォローしてもらえると……あ、でも先輩に頼りすぎるのも良くないですよね、頑張ります、はい!」

早口の言葉の端々に、緊張が滲み出ている。

(……落ち着け。そんなに気負わなくていい)

内心で苦笑しながらも、俺が返せたのは「……ああ」という素っ気ない一言だけだった。
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