クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
向かったのは、執務室の入口付近にある自動販売機。
いつもの無糖のブラックコーヒーのボタンを押そうとして、俺の指はピタリと止まった。
脳裏に浮かんだのは、彼女が自販機で買った冷たい缶を手に、営業部のデスクの前を通り過ぎていく姿。
自分のモニターから視線を外すふりをしながら、微糖のコーヒーを握る手を俺は何度となく目で追っていたらしい。
意識などしていないつもりだったのに、彼女の些細な好みが当たり前のように頭の中にインプットされている。
(……我ながら、重症だな)
自嘲気味に息を吐き、少しだけ迷ってから俺はその微糖のボタンを押した。
静まり返ったフロアに、ガコン、という落下音が無駄に大きく響く。
少し離れた席の彼女が気づいたのではないかと、一瞬だけ背中が強張った。だが、彼女は何か考え事をしているかのような表情でこちらを振り返る様子はない。
取り出し口から冷たい缶を握りしめ、彼女のデスクへと歩み寄る。
どうやって渡すべきか、言い訳ばかりが頭を巡る。
「たまたま押し間違えた」は不自然だ。「前に飲んでるのを見かけたから」なんて言えるわけもない。
迷っているうちに、彼女の真横まで来てしまった。
いつもの無糖のブラックコーヒーのボタンを押そうとして、俺の指はピタリと止まった。
脳裏に浮かんだのは、彼女が自販機で買った冷たい缶を手に、営業部のデスクの前を通り過ぎていく姿。
自分のモニターから視線を外すふりをしながら、微糖のコーヒーを握る手を俺は何度となく目で追っていたらしい。
意識などしていないつもりだったのに、彼女の些細な好みが当たり前のように頭の中にインプットされている。
(……我ながら、重症だな)
自嘲気味に息を吐き、少しだけ迷ってから俺はその微糖のボタンを押した。
静まり返ったフロアに、ガコン、という落下音が無駄に大きく響く。
少し離れた席の彼女が気づいたのではないかと、一瞬だけ背中が強張った。だが、彼女は何か考え事をしているかのような表情でこちらを振り返る様子はない。
取り出し口から冷たい缶を握りしめ、彼女のデスクへと歩み寄る。
どうやって渡すべきか、言い訳ばかりが頭を巡る。
「たまたま押し間違えた」は不自然だ。「前に飲んでるのを見かけたから」なんて言えるわけもない。
迷っているうちに、彼女の真横まで来てしまった。