クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
「……遅くまでお疲れ様。良かったら、これ」

結局、口から出たのはそんな素っ気ない言葉だけだった。

「あ……っ、ありがとうございます」

驚いたように目を丸くして缶を受け取る彼女。
その顔をまともに見ることができず、俺はすぐに身を翻した。

自分のデスクに戻り、モニターに視線を固定する。
仕事に集中したいが、静かなフロアで彼女の一挙一動が耳に入ってくるのをどうにもできずにいた。
モニターに映る資料を見ているふりをしながら、彼女の気配だけを追う。

数分後。
ぷしゅ、とプルタブを起こす小気味いい音が、静かなフロアに響いた。

(……飲んでくれたか)

それだけで、なぜか資料の文字が少しだけ読めるようになった気がした。
思ったより、ずっと小さなことで安堵している自分がいた。
……我ながら、単純すぎる。

だが、彼女が少しでもリラックスしてくれたなら、それでいい。俺の役割はそこまでだ。
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