クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
飲み会が終わったあと、誰かと話す気にもなれず、そのまま一人で駅へ向かった。
夜風が、アルコールで火照った頭を少しだけ冷ましてくれる。

……今日は見ないでおこうと決めていたのに、結局、彼女の姿ばかりを探してしまった。
同僚と何を話したか、正直あまり覚えていない。記憶に残っているのは、普段見せない顔で笑う彼女の横顔ばかり。

(俺は、いい歳して何やってるんだか……)

小さくため息をつき、ネクタイを引っ張ってさらに緩める。

上司として、線引きはしっかりしているつもりだ。
けれど、もしこれ以上あの笑顔を知ってしまったら、どう理性を保てばいいのか自信がない。

(……ほんと、参ったな)

誰にも聞かれない独り言は夜道に溶けて消えた。
手で顔を覆う。夜風は涼しいはずなのに、頬の熱だけはなかなか引かなかった。
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