クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

#5【先輩視点】「御空さん」のはずだった――無意識が先に越えてしまった境界線

秋風が吹き始めた頃。
プロジェクトは四ヶ月目に入り、彼女の周りにはいつの間にか人が集まるようになっていた。

昼休み。
営業部の自分のデスクで朝に買ったコンビニのサンドイッチを齧りながら、俺は開いた資料をぼんやり眺めていた。
最近は昼休みも頭を切り替えきれず、食事をしながら資料を確認することが増えている。
……とはいえ、今の意識はほとんど仕事には向いていなかった。

企画部のエリア。その中心にいるのは、いつも彼女だ。

「りんりん、今日のお弁当なに?」

少し離れた距離でも、そのにぎやかな声はよく聞こえる。
彼女は誰とでも分け隔てなく接し、実によく笑う。陽だまりのようなその場所には、部署の垣根を越えて自然と人が集まっていた。

「りんりんって呼びたくなる雰囲気あるよな」
誰かのその言葉に、俺は心の中で静かに同意した。
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