クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
確かに彼女には、そういう柔らかさがある。みんなが親しげにそのあだ名で呼ぶのも、ごく自然なことのように思えた。
(……御空さん)
俺は心の中で、いつも通り彼女の苗字を反芻した。
俺は彼女を苗字でしか呼ばない。あるいは、名前すら呼ばずに用件を切り出す。あの温かい輪の中にいる連中とは違う、明確な「上司と部下」の線引き。
この距離感でいい。これが一番安全で、正しい。
あの陽だまりのような輪の中に、不愛想な俺が入っていく余地なんてないのだから。
ふと、彼女の顔がこちらを向いた気がした。
俺は慌てて手に持った資料へと視線を落とす。
(……気づかれたか?)
じっと資料の端を見つめたままなんとかやり過ごす。
もう一度視線を戻して確認する勇気はなく、そのまま時間が過ぎるのを待った。
しばらくして、昼休みの終わりを告げるように輪がゆっくりと解散し始めた。
俺は軽く息を吐いてから、残りのコーヒーを飲み干す。
もうさすがに気にしすぎだろう――そう自分に言い聞かせながら、みんなが自席に戻っていく中、最後に一目だけ企画部の方へ視線を向けた瞬間――彼女とふいに目が合った。
(……御空さん)
俺は心の中で、いつも通り彼女の苗字を反芻した。
俺は彼女を苗字でしか呼ばない。あるいは、名前すら呼ばずに用件を切り出す。あの温かい輪の中にいる連中とは違う、明確な「上司と部下」の線引き。
この距離感でいい。これが一番安全で、正しい。
あの陽だまりのような輪の中に、不愛想な俺が入っていく余地なんてないのだから。
ふと、彼女の顔がこちらを向いた気がした。
俺は慌てて手に持った資料へと視線を落とす。
(……気づかれたか?)
じっと資料の端を見つめたままなんとかやり過ごす。
もう一度視線を戻して確認する勇気はなく、そのまま時間が過ぎるのを待った。
しばらくして、昼休みの終わりを告げるように輪がゆっくりと解散し始めた。
俺は軽く息を吐いてから、残りのコーヒーを飲み干す。
もうさすがに気にしすぎだろう――そう自分に言い聞かせながら、みんなが自席に戻っていく中、最後に一目だけ企画部の方へ視線を向けた瞬間――彼女とふいに目が合った。