クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
#7【先輩視点】「明日、朝一の対応がある」——上司として当然のことをしただけだ
急激に冷え込みが厳しくなった、十一月の上旬。
朝から、彼女の様子が遠目で見ても少しおかしいことには気づいていた。
……部下の体調を把握するのは、上司として当然のことだ。そう自分に言い聞かせながら、俺はもう一度だけ彼女の方へ視線を向けた。
いつもより瞬きの回数が多く、どこか集中が途切れたように作業の手が一瞬だけ止まり、こめかみを押さえるような動きをしている。
(……明らかに本調子ではなさそうだ)
よりによって、今日は進行中のプロジェクトにおける重要顧客との接待がある。
部長は彼女の秘めた将来性を高く買っており、現場の空気を学ばせる今後のためにもと、あえてこの席に彼女を指名したのだ。
休ませるべきか迷ったが、彼女の性格を考えると、ここで無理に「帰れ」と言っても素直に休めるタイプではない気がした。むしろ期待に応えられなかったと、自分を責めてしまうかもしれない。
ならば、俺がやるべきことは一つ。
今日の接待中、彼女にこれ以上のストレスと負担をかけないよう、全神経を使って立ち回る。そしてそれを、誰にも――彼女自身にも、「特別な好意」だと悟られないようにすること。
あくまで「部下の体調を管理する上司」という強固な壁の内側で、完璧に処理しなければならない。
朝から、彼女の様子が遠目で見ても少しおかしいことには気づいていた。
……部下の体調を把握するのは、上司として当然のことだ。そう自分に言い聞かせながら、俺はもう一度だけ彼女の方へ視線を向けた。
いつもより瞬きの回数が多く、どこか集中が途切れたように作業の手が一瞬だけ止まり、こめかみを押さえるような動きをしている。
(……明らかに本調子ではなさそうだ)
よりによって、今日は進行中のプロジェクトにおける重要顧客との接待がある。
部長は彼女の秘めた将来性を高く買っており、現場の空気を学ばせる今後のためにもと、あえてこの席に彼女を指名したのだ。
休ませるべきか迷ったが、彼女の性格を考えると、ここで無理に「帰れ」と言っても素直に休めるタイプではない気がした。むしろ期待に応えられなかったと、自分を責めてしまうかもしれない。
ならば、俺がやるべきことは一つ。
今日の接待中、彼女にこれ以上のストレスと負担をかけないよう、全神経を使って立ち回る。そしてそれを、誰にも――彼女自身にも、「特別な好意」だと悟られないようにすること。
あくまで「部下の体調を管理する上司」という強固な壁の内側で、完璧に処理しなければならない。