クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
年明け、仕事始めの朝。
午前中の挨拶回りを終えた後、給湯室の前で彼女と鉢合わせた。
「——あ、先輩! あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします」
久しぶりに見る彼女は、少しだけ頬を赤くして、弾けるような笑顔で頭を下げた。
その眩しさに、一瞬で胸の奥がざわつく。だが、今の俺には「体制変更」という逃げ道がある。いずれ距離を取ると決めたことで、必要以上に身構えずに済む気がしていた。
(……どうせ、もうすぐ離れるんだ)
そう思うと、自分でも意外なくらい身勝手な寂しさが滲んだ。
こうして気軽に話せる時間も、もう長くないかもしれない。今日くらいは、少し肩の力を抜いてもいいだろう。
そんな油断が、ほんの少しだけ口を軽くした。
「……あ、ああ、りんりん。今年もよろしく」
——言った直後。
自分の口から出たその呼び名に、一瞬だけ思考が止まる。
(……やってしまった)
雨の日の失言であれほど反省したというのに。
……だが、あの時のようなパニックはなかった。むしろ、その呼び名は驚くほど自然に口から出て、自分でも少し戸惑うほどしっくりきていた。
午前中の挨拶回りを終えた後、給湯室の前で彼女と鉢合わせた。
「——あ、先輩! あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします」
久しぶりに見る彼女は、少しだけ頬を赤くして、弾けるような笑顔で頭を下げた。
その眩しさに、一瞬で胸の奥がざわつく。だが、今の俺には「体制変更」という逃げ道がある。いずれ距離を取ると決めたことで、必要以上に身構えずに済む気がしていた。
(……どうせ、もうすぐ離れるんだ)
そう思うと、自分でも意外なくらい身勝手な寂しさが滲んだ。
こうして気軽に話せる時間も、もう長くないかもしれない。今日くらいは、少し肩の力を抜いてもいいだろう。
そんな油断が、ほんの少しだけ口を軽くした。
「……あ、ああ、りんりん。今年もよろしく」
——言った直後。
自分の口から出たその呼び名に、一瞬だけ思考が止まる。
(……やってしまった)
雨の日の失言であれほど反省したというのに。
……だが、あの時のようなパニックはなかった。むしろ、その呼び名は驚くほど自然に口から出て、自分でも少し戸惑うほどしっくりきていた。