クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
#13【先輩視点】「なんで、ですか」——真っ直ぐな瞳に、逃げたい本音を全部見透かされた気がした
会議室に続く廊下の奥から、フロアに戻ってきた彼女の姿が見えた。
その足取りはどこか心許なく、フロアで立ち止まりしばらくその場で立ち尽くしている。
(……話が、通ったな)
三月。プロジェクトが折り返し地点を迎えたこのタイミングで、俺が裏で進めていた体制変更がついに実行に移された。
彼女をリーダーとした、SNS施策の独立ユニット。
これで、彼女は俺の指揮下から外れ、一人前の責任者として独り立ちすることになる。
俺は自分のデスクから、呆然としている彼女の姿を静かに見つめていた。
(これでいい。これが彼女の未来にとっての最適解だ)
自分にそう言い聞かせる。彼女の才能とこれまでの実績を考えれば、抜擢されるのは当然のことだ。決して、俺の身勝手な感情だけで彼女を遠ざけたわけではない。
……だが、心の奥底にこびりついた罪悪感と、ちりちりとした痛みを完全に無視することはできなかった。
彼女の成長を願う気持ちは本物だ。だがそれと同じくらい、「俺が俺でいられなくなる前に、彼女から逃げたかった」という臆病な本音があることも、俺自身が一番よく分かっていた。
(……最後に、俺自身の口で伝えなければならない)
その足取りはどこか心許なく、フロアで立ち止まりしばらくその場で立ち尽くしている。
(……話が、通ったな)
三月。プロジェクトが折り返し地点を迎えたこのタイミングで、俺が裏で進めていた体制変更がついに実行に移された。
彼女をリーダーとした、SNS施策の独立ユニット。
これで、彼女は俺の指揮下から外れ、一人前の責任者として独り立ちすることになる。
俺は自分のデスクから、呆然としている彼女の姿を静かに見つめていた。
(これでいい。これが彼女の未来にとっての最適解だ)
自分にそう言い聞かせる。彼女の才能とこれまでの実績を考えれば、抜擢されるのは当然のことだ。決して、俺の身勝手な感情だけで彼女を遠ざけたわけではない。
……だが、心の奥底にこびりついた罪悪感と、ちりちりとした痛みを完全に無視することはできなかった。
彼女の成長を願う気持ちは本物だ。だがそれと同じくらい、「俺が俺でいられなくなる前に、彼女から逃げたかった」という臆病な本音があることも、俺自身が一番よく分かっていた。
(……最後に、俺自身の口で伝えなければならない)