クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
夕方。彼女が自分のデスクで資料を整理しているのを見計らい、俺は席を立った。
足が鉛のように重い。だが、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
「……りんりん、少しいいか」
「はい」
振り向いた彼女の瞳には、まだ戸惑いの色が残っていた。
俺は彼女の隣に立ち、フロアを見渡すように視線を外し、声を落とした。
「……部長から、話は聞いたか」
「はい。聞きました」
「SNS周りは、君をリーダーとした独立ユニットに任せる。……これからは、俺に確認を通さず、君の判断で進めていい」
自分の口から出た言葉に、一瞬だけ呼吸が止まった。
『俺に確認を通さず』。それはつまり、もう俺の隣で一緒に画面を覗き込む必要はないという意味だ。
「え……。私が、一人で、ですか……?」
不安そうに揺れる瞳。今すぐ「俺がサポートする」と言ってやりたい衝動を、奥歯を噛み締めて殺す。
「ああ。いつまでも俺の隣にいたら、君の良さが活かしきれない。……君の将来のためだ。独り立ちの時期だよ」
彼女は太陽なのだ。俺という狭くて暗い箱に閉じ込めておいていい人材ではない。
声が震えないよう、必死に腹に力を込めて真っ直ぐに言い切った。
足が鉛のように重い。だが、ここで立ち止まるわけにはいかなかった。
「……りんりん、少しいいか」
「はい」
振り向いた彼女の瞳には、まだ戸惑いの色が残っていた。
俺は彼女の隣に立ち、フロアを見渡すように視線を外し、声を落とした。
「……部長から、話は聞いたか」
「はい。聞きました」
「SNS周りは、君をリーダーとした独立ユニットに任せる。……これからは、俺に確認を通さず、君の判断で進めていい」
自分の口から出た言葉に、一瞬だけ呼吸が止まった。
『俺に確認を通さず』。それはつまり、もう俺の隣で一緒に画面を覗き込む必要はないという意味だ。
「え……。私が、一人で、ですか……?」
不安そうに揺れる瞳。今すぐ「俺がサポートする」と言ってやりたい衝動を、奥歯を噛み締めて殺す。
「ああ。いつまでも俺の隣にいたら、君の良さが活かしきれない。……君の将来のためだ。独り立ちの時期だよ」
彼女は太陽なのだ。俺という狭くて暗い箱に閉じ込めておいていい人材ではない。
声が震えないよう、必死に腹に力を込めて真っ直ぐに言い切った。