クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
長い、数秒の沈黙。
彼女は何かを探るように俺の目を見ていたが、やがて、小さく息を吸い込んだ。

「……分かりました。やってみます」

俺に向けてくれたのは、精一杯の、だが確かな決意を秘めた笑顔だった。

(……ああ。やっぱり、彼女は強い)

その笑顔を見た瞬間、俺の胸の中でくすぶっていた僅かな葛藤は、静かな喪失感へと変わった。
俺がいなくても、彼女はこうして前を向いて歩いていける。
それが嬉しくて、そして、どうしようもなく寂しかった。

俺は短く頷き、背を向けて自分のデスクへと歩き出す。
振り返ることはできなかった。
振り返ってしまえば、自ら手放したその光に、もう一度手を伸ばしてしまいそうだったから。

自席に戻り、迷いを誤魔化すように資料を手に取る。
だが、ページを捲っても内容はほとんど頭に入ってこなかった。
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