クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
「大丈夫だ。君の判断が、このプロジェクトの正解だよ」

これは、突き放すための言葉ではない。
俺がこれまでの半年間、誰よりも近くで彼女を見てきたからこそ言える、最大級の信頼の証だった。
彼女の直感、彼女の情熱、そして彼女が積み上げてきた努力。それらが導き出した答えなら、俺が口を挟む余地などどこにもない。

「……はい。そう、ですよね。……すみません」

消え入るような声。
俺はそれ以上何も言わず、淹れたてのコーヒーを手に給湯室を後にした。
一度も振り返らなかったのは、振り返れば、彼女の泣き出しそうな顔を見て取り返しのつかないことをしてしまいそうだったからだ。

(……すまない、りんりん)

心の中で、一度だけそう呟く。
嫌われてもいい。冷たい人間だと思われても構わない。
彼女はもう、一人で前に進める。……なら、俺はもう余計な影を落とさない方がいい。

自席に戻り、コーヒーを一口すする。
苦い味の奥に、彼女ならきっとやり遂げるという確信だけが静かに残っていた。
< 185 / 210 >

この作品をシェア

pagetop