クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

#15【先輩視点】知らなくていい。君の企画を守るため、俺は部長と戦った

彼女のユニットが予算承認の壁にぶつかっている。
その噂は、営業部の同期や、隣のチームの雑談からなんとなく耳に入っていた。

(……やはり、あの部長が相手では一筋縄ではいかないか)

はじめは、静観するつもりだった。彼女をリーダーに据えた以上、そこを突破するのも彼女の仕事であり、成長のための試練だ。
俺が手を貸してしまえばせっかくの「独り立ち」が台無しになる。

そう自分に言い聞かせ、平穏な上司の顔を保っていた。
だが、数日が過ぎ、暗くなったオフィスに煌々と明かりが灯り続けるのを見るにつれ、俺の心はざわつき始めた。
共有サーバーに深夜にアップロードされた、修正に修正を重ねた企画書。
何度も差し戻され、数字の整合性に苦しみ、それでも食らいつこうとする彼女たちの足跡。

(……このままでは、チームが疲弊し切るな……)

その夜、俺は誰にも気づかれないよう、共有サーバーに上がっていた彼女の最新の資料をすべて読み込んだ。
施策の内容は、非の打ち所がない。ブランドの新しいターゲット層を確実に捉えている。ただ、部長を納得させるための「組織的な論理」と「リスクを取るだけの必然性」が、あと一歩だけ足りなかった。
< 186 / 210 >

この作品をシェア

pagetop