クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
翌朝、俺は誰にも告げず、直接部長の席に行き「少しお時間よろしいですか」と声をかけた。

「主任がわざわざ、何の用だ?」

二人で会議室へ移動した。
部長の怪訝そうな視線を正面から受け止め、俺はあらかじめ用意していた補足資料をデスクに置いた。それは彼女の企画を、経営的な視点から再解釈し、リスクを俺自身が背負う形で構成し直したものだった。

「今回のSNS施策、御空(みそら)さんが作成したこの案は、ブランドの魂です」

自分の声が、驚くほど低く、重く響いた。
「前例がないからとここで削るなら、このプロジェクトに未来はありません。もしこれに納得いただけないのなら……俺をこのプロジェクトから外してください。俺は、失敗すると確信している体制の片棒を担ぐつもりはありません」

部長の眉が動いた。静かな沈黙が流れ、俺の背中を冷や汗が伝う。
不退転の覚悟——などという言葉、今までの俺なら鼻で笑っていただろう。だが、あの時俺を動かしていたのは、論理でも効率でもなく、ただ「彼女が信じたものを守りたい」という、ひどく熱く、不器用な情熱だった。

結局、一時間の激論の末、部長は「……そこまで言うなら、お前の顔を立てよう」と首を縦に振った。

会議室を出て、大きな溜息をつく。
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