クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
(これを返せば、すべてが終わる)
プロジェクトが終われば、彼女との業務上の接点はなくなる。俺が彼女の領域に踏み込む理由も、守ってやる口実も、すべて失われる。
頭では分かっている。ここで綺麗に手を離すのが、彼女の未来のためであり、何より「一人の男」として踏み込んではいけない最後の一線なのだと。
だが。
引き出しを閉めようとする指先が、わずかに躊躇った。
……本当は、手放したくない。
誰よりも近くで、その眩しい成長を見続けていたかった。
リーダーとして独り立ちしていく彼女を頼もしく思う反面、俺の知らない場所で、俺の知らない顔を見せるようになっていく彼女を想像するだけで、胸の奥が焼けるように疼く。
(……諦めるべきだと、ずっと思ってきたのに)
自分の中に潜む、傲慢なまでの執着。
俺はそれを無理やり理性の奥底へ押し込めると、少しだけ角が丸くなったクリアファイルを、一度だけ強く握りしめた。
次に彼女と会った時、これを返そう。
それを返せば、きっと区切りになる。
……そう、自分に言い聞かせた。
静まり返ったオフィスで、俺は自分に言い聞かせるように、再びキーボードへと指を走らせた。
プロジェクトが終われば、彼女との業務上の接点はなくなる。俺が彼女の領域に踏み込む理由も、守ってやる口実も、すべて失われる。
頭では分かっている。ここで綺麗に手を離すのが、彼女の未来のためであり、何より「一人の男」として踏み込んではいけない最後の一線なのだと。
だが。
引き出しを閉めようとする指先が、わずかに躊躇った。
……本当は、手放したくない。
誰よりも近くで、その眩しい成長を見続けていたかった。
リーダーとして独り立ちしていく彼女を頼もしく思う反面、俺の知らない場所で、俺の知らない顔を見せるようになっていく彼女を想像するだけで、胸の奥が焼けるように疼く。
(……諦めるべきだと、ずっと思ってきたのに)
自分の中に潜む、傲慢なまでの執着。
俺はそれを無理やり理性の奥底へ押し込めると、少しだけ角が丸くなったクリアファイルを、一度だけ強く握りしめた。
次に彼女と会った時、これを返そう。
それを返せば、きっと区切りになる。
……そう、自分に言い聞かせた。
静まり返ったオフィスで、俺は自分に言い聞かせるように、再びキーボードへと指を走らせた。