クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
隣に立つ彼女から、外の冷たい冬の空気と、ほんのりとしたアルコールの甘い香りが漂う。
誰もいない夜のオフィス。二人きり。
——呼んでから、気づいた。渡すだけなら、席まで持っていけばよかった。
その距離の近さに、一瞬だけ理性が揺らぎそうになるのを、引き出しに手を伸ばす動作で必死に押し込めた。
「……あの、先輩! その前に、言わせてください」
「ん?」
「イベント前夜の、パネルの件……本当に、ありがとうございました。先輩が部長やみんなを集めてくれなかったら、私、あのままどうしていいか分からなくて……」
深く頭を下げる彼女を見て、俺は引き出しにかけた手を止めた。
「……プロジェクトの責任者として当たり前のことをしただけだ。それにあの絶望的な状況でリーダーの君が逃げずに最善を尽くそうとしたからみんなが動いたんだよ」
「でも……先輩が、いてくれなかったら」
「よくやったよ。……胸を張れ」
それは、教え子に対する最大の労いであり、同時に「これ以上彼女に寄り添うな」という自分自身への戒めでもあった。
胸の痛みを押し込めるように視線を落とし、引き出しから一番下にあるクリアファイルを取り出す。
誰もいない夜のオフィス。二人きり。
——呼んでから、気づいた。渡すだけなら、席まで持っていけばよかった。
その距離の近さに、一瞬だけ理性が揺らぎそうになるのを、引き出しに手を伸ばす動作で必死に押し込めた。
「……あの、先輩! その前に、言わせてください」
「ん?」
「イベント前夜の、パネルの件……本当に、ありがとうございました。先輩が部長やみんなを集めてくれなかったら、私、あのままどうしていいか分からなくて……」
深く頭を下げる彼女を見て、俺は引き出しにかけた手を止めた。
「……プロジェクトの責任者として当たり前のことをしただけだ。それにあの絶望的な状況でリーダーの君が逃げずに最善を尽くそうとしたからみんなが動いたんだよ」
「でも……先輩が、いてくれなかったら」
「よくやったよ。……胸を張れ」
それは、教え子に対する最大の労いであり、同時に「これ以上彼女に寄り添うな」という自分自身への戒めでもあった。
胸の痛みを押し込めるように視線を落とし、引き出しから一番下にあるクリアファイルを取り出す。