【凛視点】クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
同僚のツッコミに対して、先輩は「そうか?」と首を傾げるだけで、全然悪びれていない。
怒られるとか、変なことを言ったとか、そういう自覚が一ミリもなさそうな顔をしている。

(……天然なんだ、この人)

クールで、口数が少なくて、感情を表に出さない人。そういうイメージしかなかった。
でも、あの飲み会の笑顔といい、今の図書館発言といい——先輩って、思っていたより、ずっと。

(……面白い人だな)

「りんりん、早く行かないと次の打ち合わせ始まるよ」

後ろから同期に声をかけられて、ハッと我に返った。

「あ、ごめん! 今行く」

慌てて歩き出しながら、前を行く先輩の背中をちらりと見る。
同僚にまだ何か言われながら、先輩は「……そうか」「……そうは思わなかったが」と、淡々と答えている。

(全然反省してない)

それがまた、おかしくて。
私は俯いて、口元の笑みをそっと隠した。
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