【凛視点】クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
自分のデスクに戻って、次の打ち合わせの資料を揃えながらも、さっきの会話が頭から離れなかった。

『図書館みたいだったな』

仕事中の先輩は、いつも的確で無駄がない。だからこそ、ふとした瞬間にこぼれる「彼だけの独特な世界観」が、たまらなく魅力的に見えてしまう。

(もっと知りたい、って思ってる……よね、私)

私は、自分の気持ちを認めざるを得なかった。
今まで「怖い」と思っていた静かな横顔が今は「どんな面白いことを考えているんだろう」と、楽しみで仕方がないのだ。

フロアの向こう側で、先輩がまた静かに画面に向かっている。
さっき廊下で不思議ちゃん発言をしていた人と、同一人物とは思えないくらい。

(……でも、同じ人なんだよね)

私はこっそりと、もう一度だけ口元を緩めた。
先輩のことを考えると、なんだかいつも、じわじわと心が温かくなる。

この「じわじわ」の正体を、今の私はまだ、認める勇気を持てずにいた。
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