【凛視点】クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
夜、銀座の和食店。
個室に通されると、得意先の担当者が三人、すでに席についていた。部長が場を仕切りながら、和やかな雰囲気で会話が進んでいく。
私は末席に座って、愛想よく笑いながら、ひたすら場の空気を読んでいた。
(……頭が痛い。でも笑う。笑えば大丈夫)
運ばれてくる豪華な料理も、今の私には味がよくわからない。
形ばかりの乾杯を終え、一口もつけられなかったビールのグラスが下げられると、代わりに陶器のお猪口が運ばれてきた。
体調が悪い時のお酒は、絶対に良くない。
けれど盛り上がる会話の中で、注がれようとするお酒を断るのは、新人には勇気がいる。
「あ、もう一杯どうですか」
得意先の担当者が、上機嫌で私の手元へ徳利徳利を向けた。
厚みのある陶器のお猪口は、中身が減っているのか、一口もつけていないのか、外からは判別がつかない。「もう入っていますから」と断る隙もなく、徳利の口が迫る。
断る言葉を探して頭の中が真っ白になった、その時。
個室に通されると、得意先の担当者が三人、すでに席についていた。部長が場を仕切りながら、和やかな雰囲気で会話が進んでいく。
私は末席に座って、愛想よく笑いながら、ひたすら場の空気を読んでいた。
(……頭が痛い。でも笑う。笑えば大丈夫)
運ばれてくる豪華な料理も、今の私には味がよくわからない。
形ばかりの乾杯を終え、一口もつけられなかったビールのグラスが下げられると、代わりに陶器のお猪口が運ばれてきた。
体調が悪い時のお酒は、絶対に良くない。
けれど盛り上がる会話の中で、注がれようとするお酒を断るのは、新人には勇気がいる。
「あ、もう一杯どうですか」
得意先の担当者が、上機嫌で私の手元へ徳利徳利を向けた。
厚みのある陶器のお猪口は、中身が減っているのか、一口もつけていないのか、外からは判別がつかない。「もう入っていますから」と断る隙もなく、徳利の口が迫る。
断る言葉を探して頭の中が真っ白になった、その時。