【凛視点】クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
見上げると、いつの間にか灰色の雲が重く垂れ込めている。次の瞬間には、アスファルトを黒く染める雨粒が、容赦なく降り注ぎ始めた。
「……降ってきたな」
先輩が低く呟き、足を止めた。
私たちが歩いていたのは、川に架かる長い橋のちょうど真ん中あたりだった。遮るもののない風が吹き抜け、前を見ても後ろを見ても、雨宿りできそうな屋根や木陰は一切ない。ここから橋を渡りきって駅に着くまでには、まだ15分はかかるだろう。
慌てて鞄を探ったけれど、折りたたみ傘は玄関に乾かしたままだった。
「すみません、私、傘を忘れて……」
謝りかけた私の視界に、一本の折りたたみ傘が差し出される。
先輩が自分の鞄から、迷いなく取り出したものだった。
「——りんりん、これ使って」
雨の音に混じって届いた、その言葉。
私は、差し出された傘を見たまま、心臓が跳ねるのを自覚した。
「……降ってきたな」
先輩が低く呟き、足を止めた。
私たちが歩いていたのは、川に架かる長い橋のちょうど真ん中あたりだった。遮るもののない風が吹き抜け、前を見ても後ろを見ても、雨宿りできそうな屋根や木陰は一切ない。ここから橋を渡りきって駅に着くまでには、まだ15分はかかるだろう。
慌てて鞄を探ったけれど、折りたたみ傘は玄関に乾かしたままだった。
「すみません、私、傘を忘れて……」
謝りかけた私の視界に、一本の折りたたみ傘が差し出される。
先輩が自分の鞄から、迷いなく取り出したものだった。
「——りんりん、これ使って」
雨の音に混じって届いた、その言葉。
私は、差し出された傘を見たまま、心臓が跳ねるのを自覚した。