クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
ある日の仕事帰り。
ふらりと立ち寄ったコンビニのコーヒーコーナーで、ふと足が止まった。
棚に並んだ、ドリップコーヒーの詰め合わせ。数種類の豆が小分けになった、少しだけ上質なセット。

(……先輩、いつもブラック飲んでる)

残業の夜に差し出してくれた缶コーヒー。
接待の夜の、さりげない守護。
雨の中、濡れながら走っていった背中。

気づけば自分は先輩にお世話になりっぱなしだ。
借りた傘を返した時にもお礼を口にしたけれど、先輩はすぐに仕事の話でその場を流してしまった。

だから余計に、宙に浮いたままのこの気持ちをどうにかして届けたかったのだ。
はぐらかされないように、ちゃんとお礼を言えるきっかけをずっと探していた。

(……これ、いいかも)

大げさじゃない。でも、ちゃんと気持ちが伝わる。
私は、棚からそっと詰め合わせを手に取った。
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