クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
先輩は、差し出された箱をじっと見つめ、それから私の顔を見た。
一拍、沈黙。
「……いや、お礼ならこの間も聞いたよ。だから、そんなに気を遣わなくていい。……全部、当たり前のことをしただけだから」
「当たり前じゃないです」
思ったより、はっきりした声が出た。
先輩が、わずかに目を細める。
「…傘の件だって、接待の夜だって。先輩がいてくれなかったら、私、もっとぼろぼろになってました。だから、ちゃんとお礼がしたかったんです。……受け取って、もらえませんか」
先輩は、また少しだけ黙った。
それから、静かに手を伸ばして、詰め合わせを受け取った。
「……ありがとう」
いつもより少しだけ、声のトーンが低い気がした。
私は「良かったです」と短く笑って、逃げるように自分の席に戻った。
席に着いてから、こっそりとフロアの向こう側に目をやった。
先輩が、受け取ったコーヒーの詰め合わせをモニター横のスタンドの上にそっと置くのが見えた。
その後、パソコンに向かう横顔はいつも通りだった。
でも——私は見逃さなかった。
先輩の視線が一瞬だけ、スタンドに置かれたその箱へと向いたのを。
そして、いつもはきつく結ばれている口元が——ほんの少しだけ、柔らかく緩んだのを。
(……喜んでくれてる)
私は、自分のパソコンの画面を開きながら、胸の奥が温かいもので満たされていくのを感じた。
一拍、沈黙。
「……いや、お礼ならこの間も聞いたよ。だから、そんなに気を遣わなくていい。……全部、当たり前のことをしただけだから」
「当たり前じゃないです」
思ったより、はっきりした声が出た。
先輩が、わずかに目を細める。
「…傘の件だって、接待の夜だって。先輩がいてくれなかったら、私、もっとぼろぼろになってました。だから、ちゃんとお礼がしたかったんです。……受け取って、もらえませんか」
先輩は、また少しだけ黙った。
それから、静かに手を伸ばして、詰め合わせを受け取った。
「……ありがとう」
いつもより少しだけ、声のトーンが低い気がした。
私は「良かったです」と短く笑って、逃げるように自分の席に戻った。
席に着いてから、こっそりとフロアの向こう側に目をやった。
先輩が、受け取ったコーヒーの詰め合わせをモニター横のスタンドの上にそっと置くのが見えた。
その後、パソコンに向かう横顔はいつも通りだった。
でも——私は見逃さなかった。
先輩の視線が一瞬だけ、スタンドに置かれたその箱へと向いたのを。
そして、いつもはきつく結ばれている口元が——ほんの少しだけ、柔らかく緩んだのを。
(……喜んでくれてる)
私は、自分のパソコンの画面を開きながら、胸の奥が温かいもので満たされていくのを感じた。