クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

#10 【凛視点】私が彼を変えていた? 同僚の噂話と、ついに認めてしまった「好き」の気持ち

年末の足音が近づいてきた頃。
プロジェクトは佳境を迎え、私の毎日は目まぐるしく過ぎていった。
資料を作り、修正し、打ち合わせに飛び込む。気づけば窓の外は真っ暗、という日が続いていた。

それでも、不思議としんどいとは思わなかった。
打ち合わせで先輩の隣に座るたび、あの雨の日の記憶や、指先が触れた時の熱が、疲れ切った体をじんわりと温めてくれるから。

(……今日も、頑張れる)

そう思える理由が、すぐ隣にある。

その日は、珍しく定時に仕事が片付いた。
片付けを終えてマグカップを洗おうと給湯室へ向かっていると、中から楽しそうな話し声が聞こえてきた。
先輩と同世代の、少し声の大きい営業部の男性社員二人だ。

(あ、先客がいたんだ……)

決して広くはない給湯室。そこに男性が二人。
今入って「お疲れ様です!」なんてお邪魔するのも悪いかなと入口直前でちょっと躊躇い、また今度にしようと執務室に戻ろうとした——その時だった。

「そういえばさ。最近、主任……なんかちょっと明るくなったと思わない?」

思わず、足が止まった。
「主任」——彼のことだ。
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