クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日

#13 【凛視点】寂しさを強さに変えて。先輩が私を遠ざけた、本当の理由を知る勇気もないまま

三月。長丁場のプロジェクトがちょうど折り返し地点を迎えた頃、チームの空気が少し変わった。

後半戦に向けて、チームの体制を見直す、と部長から話があった。各メンバーの役割を整理して、より効率的に動けるように——そういう説明だった。

私は特に気にしていなかった。自分の仕事をちゃんとやれば、体制がどう変わっても関係ない。そう思っていた。
だから、部長に呼ばれた時も最初は何の話か分からなかった。

御空(みそら)くん。SNS周りの施策、君をリーダーとした独立ユニットに任せることにした」
「……え」
「独立ユニット、つまり君が責任者だ。メンバーも二人つける。どうだ、やれるか」

私は、しばらく言葉が出なかった。
リーダー。自分が。

「……あの、それは、先輩と相談した上で——」
「主任から提案があったんだよ」

部長が、眼鏡の奥で目を細めた。

「『彼女を独り立ちさせるべきだ』と。熱心に言ってきてね。君の成長を一番近くで見てきた人間の言葉だ。私も同意した」

私は、会議室を出てから——しばらく、フロアに立ち尽くしていた。
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