クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
その日の夕方。
私が自分のデスクで資料を整理していると、先輩が静かに近づいてきた。

「……りんりん、少しいいか」
「はい」

先輩は、私の隣に立って、フロアを見渡すようにしながら少しだけ声を落とした。

「……部長から、話は聞いたか」
「はい。聞きました」
「SNS周りは、君をリーダーとした独立ユニットに任せる。……これからは、俺に確認を通さず、君の判断で進めていい」
「え……。私が、一人で、ですか……?」
「ああ。いつまでも俺の隣にいたら、君の良さが活かしきれない。……君の将来のためだ。独り立ちの時期だよ」

先輩の声は、静かで、真っ直ぐだった。 迷いがない。揺れがない。

(……本気で、そう思ってるんだ)

私は、先輩の横顔を見た。
いつも通りの、感情の読めない表情。でも、その奥に——何かを必死で押さえ込んでいるような硬さがある気がした。

「……先輩が、提案してくれたんですよね」
「……ああ」
「……なんで、ですか」

先輩が、わずかに目を細めた。
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