クールで無口な先輩、実は天然で優しすぎる。――新人の私がその距離をゼロにするまでの600日
#15【凛視点】 先輩、ずるいです。あえて離れて私を信じてくれた、その不器用な優しさに触れた日
八月の、逃げ場のないような蒸し暑い日だった。
SNS施策の予算承認が、どうしても下りない。 部長は数字の整合性に極めて厳しい人だ。費用対効果を何度説いても、「リスクが高い」「前例がない」と一蹴される。私はメンバーと連日深夜まで資料を作り直し、切り口を変えて挑んだが、その壁は絶望的なほどに厚かった。
(……どうしよう。このままじゃ、みんなの努力が形にならない)
焦燥と悔しさで、視界が滲みそうになる。
自分で決断を下すという最初の試練を乗り越えた私を待っていたのは、企画部の先輩からのサポートを受けてもなお立ちはだかる、上層部の理解を得るというリーダーとしての「二度目の壁」だった。
喉まで出かかった「助けてください」という言葉を、私は必死に飲み込む。あの給湯室での、彼の静かな声を思い出したからだ。
『SNSのリーダーは君だろ。君の判断が、このプロジェクトの正解だよ』
(……やるしかない。私が、やるんだ)
私は資料の数値を睨みつけマウスを強く握りしめた。
SNS施策の予算承認が、どうしても下りない。 部長は数字の整合性に極めて厳しい人だ。費用対効果を何度説いても、「リスクが高い」「前例がない」と一蹴される。私はメンバーと連日深夜まで資料を作り直し、切り口を変えて挑んだが、その壁は絶望的なほどに厚かった。
(……どうしよう。このままじゃ、みんなの努力が形にならない)
焦燥と悔しさで、視界が滲みそうになる。
自分で決断を下すという最初の試練を乗り越えた私を待っていたのは、企画部の先輩からのサポートを受けてもなお立ちはだかる、上層部の理解を得るというリーダーとしての「二度目の壁」だった。
喉まで出かかった「助けてください」という言葉を、私は必死に飲み込む。あの給湯室での、彼の静かな声を思い出したからだ。
『SNSのリーダーは君だろ。君の判断が、このプロジェクトの正解だよ』
(……やるしかない。私が、やるんだ)
私は資料の数値を睨みつけマウスを強く握りしめた。